嘆く植物

ハサミやノコギリを嫌う植物があります。そりゃ誰だって切られるのは嫌でしょうが、植物の訴えはもっと手前の部分にあるようです。

植物からまだ直接理由を聞くに至っていませんが、

・鉄が苦手

・勉強不足にうんざり

・ズボラが嫌

・切る人が下手なので嫌

大体の理由はこういうことのようです。

 

「鉄が苦手」

でも貴金属ならOK。かどうかはわかりませんが、鉄、いわゆる酸化物質を嫌う植物があります。胡蝶蘭・シンビジウムなどの洋ランや確かキク科の植物も苦手だったと思います。切ればすぐ枯れてしまう訳ではありませんが、切り口が変色・傷んで腐朽しやすくなったり、切り花だと水揚げが悪くなることも。そういう時はステンレスやチタン製のハサミを使ったり、植物によっては手折ることも有効です。

「勉強不足にうんざり」

植物それぞれの切り方、切るポイント、切ってもいい時期を知っておく必要があります。例えばゴールドクレストやコノテガシワなど、バリカンや大きなハサミで葉刈りしてしまうと葉が変色して痛む種類があります。また、ギンフミズキやロバイ、ラベンダーなどの低木はトピアリーでも作るかのようにやみくもに刈込みすると樹形が崩れ、散々な事になってしまいます。剪定や宿根草の切り戻しでも、切る時期を間違えると来年の花が咲かなかったり越冬できない場合もあります。芽の付き方・花芽分化期など植物の特徴を勉強しておかなければいけません。切る人の勉強不足に嫌気がさしているようです。

「ズボラが嫌」

切れない刃で切らないで!という気持ちでしょう。メンテナンス不足のハサミや園芸用じゃない刃物で植物を切ると切り口はガサガサ、維管束や形成層といった大事な組織が傷んでしまい悪い菌も繁殖しやすくなります。「ウメ切らぬ○○、サクラ切る○○」のサクラ担当者はこのテのズボラでしょうか。剪定では切り口が滑らかだと癒合しやすく、根切りの場合は切り口から発根しやすくなります。また、刃物の使いまわしで感染するモザイク病のような病気もあります。刃を消毒したり「レンテミン」というウィルス病予防剤を刃物に塗布する事も有効です。

「切る人が下手なので嫌」

メンテナンスされた「切れる」ハサミを使い、植物の特徴を知っておくのは当たり前。あとは切り方です。切り花では水揚げしやすくする為に切り口を粗くする場合もありますが、基本的にはハサミもノコギリもスパッと切れなかったら切りなおします。プロは粗切りをしてから仕上げ切りする場合が多く、上手な庭師・植木屋さんが剪定すると切り口がどの枝を見てもキレイ。更に樹木を見た際に切り口が目立たないような切り方をします。剪定によって植物を育て景観にも配慮するプロの技です。

 

と、私なりにざっくりと代弁してみましたが、植物のバリエーションが毎年増える中、特にプロはプロ意識をもって植物に挑まないといけないなと私自身も痛感しております。

sentei

ページTOPへ戻る ページTOPへ戻る