続ハサミのメンテナンス
先日の続き、剪定バサミのメンテナンスなんですが、早速のご質問・ご相談などいただき、ありがとうございます。ここを見てくださっている方が何人かいらっしゃるんだなぁ、でもハサミをくれた植木屋のオジサンだけは見ていないといいなぁと感慨深めに思いつつ、続きを書いてみます。
最低限のサビを落とした剪定バサミ、次は刃を研ぎます。
量産された一般的な剪定鋏には刃先、小刃という部分に角度が付けられています。メーカーや種類にもよりますが、剪定バサミの場合はこの角度が大よそ20~25度。
鋭い角度ほど良く切れますが、結果として刃先の強度が落ちて刃こぼれしやすくなります。逆に角度が30度、40度と大きくなると強度はありますが刃先が枝などに喰い込みにくく、切れ味の悪いハサミになります。本来は固い枝を切るための剪定バサミ、切れ味と強度の両面からこの20~25度という角度で設定されているのです。
小端の角度をなんとなく覚え、砥石で刃付けしていきます。今回はガリガリに砥いで再刃付けしないといけないので水に浸して使う湿式の砥石を使います。当店でも販売している携帯用のダイヤモンドシャープナーは乾式で水に浸さなくてもそのまま使える気軽なもので、普段のメンテナンスにはそちらで充分です。
水分を含ませた砥石で荒砥ぎ。小刃のある表面だけを研いで刃こぼれを消していきます。砥ぐのは1面、刃表だけです。荒砥の次は仕上げ砥ぎで刃付けします。(砥石:粗砥ぎ#250、仕上げ#1000)
砥ぎ終わると刃裏に「かえし」と言われるバリができるので、仕上げ用の砥石で軽くバリを削り取ります。バリ取りはダイヤモンドシャープナーで軽くなぞるだけでも大丈夫です。
わかりにくいのですが、湾曲した刃先に約25度程度の刃付けをしました。これで砥ぎ終了。
色褪せたハンドルを好きなグリーンに塗り、組み立てて完成なのですが・・・
実は難しいのが組立の際のネジの締め方。締め過ぎも緩すぎてもダメです。元々のハサミの感触を思い出しながら調整しつつ締めるというより、感触と目視で調整していきます。ネジと刃の間には隙間を作らず、擦り合わせる刃と刃の間にだけ「ごく僅かな」隙間を作ります。
最後に油をさして完成です。
と、ここまで書きましたが、ちょっと難しく思われるかもしれません。ですが、これまでのメンテナンスは中級者やプロ向けの方法とも限りません。
もちろん適当にやってしまうと大事なハサミを無駄にする場合もあるので自信がない方は購入店やメーカー対応を勧めますが、自分でできるメンテナンス方法を覚えておく事で道具が長く使え、愛着も増します。文字や写真では伝えきれないことも多いので、もしご興味ありましたらいつでもご来店ください。
最後にひとつ。
意外と知らない方がいたり、たまにプロでも忘れている時があるようですが、剪定鋏は通常、利き手側に刃が付いています。右利き用ハサミの場合、剪定や生け花などで「切り残す」方はハサミの右側、「切り捨てる」方は左側が基本です(左利き用はその逆。花鋏など両刃の場合はどちらでも大丈夫です)。