園芸用刃物の消毒

前回のブログでは、「植物ウイルスについて植物を繁殖させている人は特にご注意」というようなことを書きました。

植物ウイルスの感染予防で意識しておきたいポイントは、

  1. 害虫の発生を予防すること
  2. 感染した植物の症状を知っておくこと
  3. 感染してそうな怪しい苗を持ち込まないこと
  4. 感染した植物がないか常に観察すること
  5. 刃物でカットした切り口など植物の傷口に刃物や手指が触れるリスクを知ること

以上の5つ。その上で、人や刃物を介した植物ウイルスの感染予防として以下の方法をおすすめします。

①リン酸三ナトリウム(第三リン酸ナトリウム)に刃物を浸す。

②キッチンハイターなど家庭用漂白剤の説明書どおりに水で薄めて刃物を浸す。

③ウイルス予防薬(農薬)レンテミンを刃物と手指に噴霧する。

①は食品添加物や写真の現像液としても使われているものですが、園芸用として「ビストロン」という商品名の消毒液も販売されていて、生産者や研究者といったプロの使用が多いように思います。

使い方は、コップなどの容器に消毒液を入れ、刃物を1~2分程度浸すだけ。

2本のハサミを用意しておいて、1株で使い終わったらハサミを消毒液に浸し、その間にもう1本のハサミを別の植物に使うという方法がいいと思います。

②についても①と同じ使い方でOK。

尚、①も②も強いアルカリ性の液体なので、素手では扱わないよう取り扱いにご注意ください。ちなみに強酸性と違って刃物が溶けることはありませんが、その日の仕事が終わったら刃物を水洗いし、乾燥させてから油をなじませておきましょう。消毒液は繰り返し使えます。

③は素手にも使える液体で、屋外で使われることが多い消毒剤です。レンテミンはシイタケから抽出したシイタケ菌糸体由来のウイルス予防薬で、芝などの発根促進剤としても使われています。携帯できる小型スプレーボトルに薬剤を入れ、植物から植物に移るごとに刃物や手指にたっぷりスプレーして使う方法があります。ただし、そういう使い方はあまりコスパがよくないため、広大な圃場などではスプレーではなく、容器を携帯して浸す方法がいいと思います。シイタケ出汁と同じような匂いと色ですが農薬です。

人を介した植物ウイルスの感染予防策として以上の3つをおすすめしています。人やペットに植物ウイルスは感染しませんが、怪我だけはしないように刃物や消毒液も取り扱いには十分ご注意ください。

尚、刃物をバーナーで炙ったり煮沸するのはおすすめしません。熱が原因で刃が弱くなってしまいます。

私の経験では、沸騰しているお湯に剪定ばさみを1分ほど浸してみたところ、刃が木の枝に喰い込みにくくなったと感じられました。

刃の先端には、目では確認できないほど薄く鋭い皮が張り出していて、この薄皮が硬い枝にグッと喰い込んでサクッとカットできるのですが、刃に高熱を加えてしまうとこの薄皮がもろくなってしまい、枝に触れるだけでパリンと割れてしまっているように思います。刃物の「焼き戻り」という現象のようですが、もし熱消毒する場合は、70~80℃までのお湯を使いましょう。ただ、いちいちお湯を沸かすのも温度を図るのも面倒ですよね。

また、植物ウイルスには殺菌剤やアルコール系の除菌剤が効きませんが、普段の刃物のお手入れとして、使い終わったら除菌シートで刃物に付いた油分(樹液)をふき取り、水洗い→乾燥→油をさす、これを仕事終わりのルーティンにすると刃物が長く使えますのでどうぞお試しください。

前回のブログにも書きましたが、植物ウイルスのほとんどは虫によって感染してしまうため、刃物や手指の消毒だけで予防はできません。また、斑入り植物など、一部の植物ウイルスに感染したものを園芸品種として流通させているものもあり、感染=即枯れる=庭全滅という訳ではありませんので、一般的なガーデニングではあまり過敏になる必要はないと思っています。

ただし、独自に植物を増やして他人へプレゼントしたり、販売している人も増えているようですが、その中にもし植物ウイルスをご存知じゃない方がいらっしゃいましたら、感染を広げないため、そして未感染の個体を守るためにも病気と予防について、しっかりとご留意ください。

ここ数年の多肉ブームで、園芸店以外でもサボテンなど鉢植えが販売されているのを見かけるようになりました。キチンと管理されていればいいのですが、購入する前に状態をよく観察することが大事です。

もし、植物ウイルスに感染した植物が見つかった場合、それを消毒液や農薬で治すことはできません。

ネットや専門書によると「植物ウイルスに感染した植物は根ごと処分しましょう」と書かれていることが多いのですが、二次感染さえ予防できれば大丈夫、そのまま最後まで大事に育ててあげてください。

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