ハサミの使い分け
たまに、「苗のピンチ(摘芯)から樹木の剪定まで、1本で済ませられるハサミを探しています」というご相談をいただきます。
ガーデナーなら草花用と樹木用、せめて2種類のハサミを使い分けるように薦めていますが、複数のハサミを携帯するのが面倒だったり、ハサミの使い分け方がわからなかったりして、たまたま手にある1本で庭仕事を済ませていると、いつの間にか手やハサミや植物に余計な負担が掛かっているかもしれません、という話をすることがあります。
ピンチや花がら摘みといった繊細なカットには、刃先が見やすくて細やかな動きができるピンセットのようなハサミが適していて、クラフト系や切り花用のハサミ、芽切りや採果用のハサミが多く使われています。でも、そういったハサミは固い枝や太い枝をカットするのが苦手で、そんなときは頑丈でダイナミックな剪定バサミが適しています。一方、この剪定バサミの刃は独特の形状や厚みがあって、ミリ単位の茎を1本だけ選り分けてカットするような刃先の見やすさや繊細なカットが苦手だったりします。例えるなら、物をつかむ際にピンセットを使うかトングやペンチを使うかの違いでしょうか。適材適所で繊細なハサミとダイナミックなハサミの2本を使い分けると、手にも植物にもハサミにも当店にとってもいいですよと薦めているのですが、やっぱり2本も持ちたくないとおっしゃる方に渋々紹介しているのがスイス製FELCOの6番と11番というハサミです。
このハサミは固い枝や太い枝のカットを得意とする剪定バサミですが、受け刃の先端に工夫があって刃先が見やすいのと、刃元から刃先まで油断のない安定した切れ味で、細く柔らかい茎もストレスなくスパッとカットできます(油断した剪定バサミは刃先に行くほど切れません)。もちろん太い枝だってサコッとカットでき、小ぶりなサイズのFELCO6番なら目安として直径20mmほどの枝、やや大ぶりな11番は直径25mmほどの枝も切ることができます。
尚、FELCOだけではありませんが、一般的な剪定バサミ(バイパス型剪定バサミ)には、「切り刃」とまな板のような役割の「受け刃」があって、ハサミを茎や枝に当てる際の「向き」があります。受け刃は切り落とす側、切り刃は幹側・根元側に当たるようにお使いください。バラなど剪定した切り口を見るとわかる時がありますが、正しい向きで剪定バサミを使うと切り口の枯れ下がりや癒合の具合に結構な差が出ます。
ここまで書いておきながら、アマチュアガーデナーやモミジの店主からじっと見られる職業でもあるプロのガーデナーなら、やっぱり複数のハサミを使い分けてほしいなとモミジは思っています。